少子高齢化や労働人口減少、ライフスタイルの多様化などにより、子育てや教育に関わる社会課題も多様化・複雑化する現代においては、非営利団体の担う社会的な役割は以前にも増してより重要なものとなってきています。
RPAやAIによって日本のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を支援するUiPathでは、このような非営利団体のデジタル化を無償支援する活動を当社の社会的責任として位置づけています。今回UiPathでは、同じく最先端技術であり実用的なAIサービスを提供する株式会社Cogent Labsと共同で、子どもの放課後を豊かにする放課後NPOアフタースクールの業務自動化を無償支援しました。今回は放課後NPOアフタースクールの取り組みや、UiPathとCogent Labs(以下、コージェントラボ)の支援で実現した業務の自動化についてご紹介します。
放課後NPOアフタースクールは、安全で豊かな放課後を日本全国で実現するために、学校施設を活用し、地域と共に子どもの育ちや学びを応援する放課後の居場所「アフタースクール」を運営、モデルを展開するNPO法人です。さらに、多種多様な企業と連携した教育プログラムを全国各地で実施。子ども達の放課後に社会の力を集めて新時代を切り拓く力を培うことに挑戦しています。
子どもを狙った犯罪の6〜7割が発生する 「リスクの高い魔の時間」とも呼ばれる放課後の時間を子どもたちにとってチャンスの時間へと変えるために、学童保育の不足や経済格差から生まれる体験格差等子育て世代が抱える課題を解決し、子どもたちにとって放課後が「ゴールデンタイム」となることを目指して活動している団体です。
今回、放課後NPOアフタースクールで自動化に取り組まれた栗林さん、林下さんは、もともとはIT関係の企業のご出身。放課後NPOアフタースクールの事務局に所属し、ITを使った組織の仕組みづくりや、社内システムの運用などの業務をご担当されています。
放課後NPOアフタースクール 栗林氏、林下氏
現在の業務について、「次働くのであれば社会貢献したいと思い、この仕事を始めました。変化のスピード感が違い、時間の流れがはやいと感じます。ITシステムの仕事もありつつ、事務局の仕事もあり、職務範囲にとらわれず視野やスキルもひろげることができました。」と林下さん。栗林さんも、「子育てを通じて、子どもと仕事の距離を近くしたい、社会貢献がしたいという思いが芽生え、この仕事を始めました。社会貢献という組織の存在意義が明確なので、自分にとって働くことの理由がはっきりし、それがひとつのモチベーションになっています。」と語ります。
栗林さんが入社された2017年当時は多くの事務がExcelファイルなどをもとに管理されていましたが、ひとつずつ業務システムを導入し、今ではほとんどのシステムがクラウド環境で動く状態に。このためコロナ禍においても業務に大きな支障はなかったといいます。
今回のUiPathとコージェントラボの無償自動化支援では、林下さんが担当されていた、口座振替依頼書の処理業務を自動化。この業務は、放課後NPOアフタースクールが運営するアフタースクールの利用登録手続きの際に受領する口座振替登録申請書の処理業務です。
「一昨年、アフタースクールの業務管理システムを刷新したのですが、利用者の口座振替依頼書だけは、回収代行業者のシステムに手書きの口座振替依頼書を見て手作業でデータ入力をする必要がありました。12月から3月頃までの4ヶ月間では2,000件ほどを手作業で入力するので、このために臨時で人を雇ったり、ボランティアにお願いしたり、事務局の他のメンバーが業務の傍ら手伝ったりしながら処理しているような状態で、とても人的リソースがかかる作業でした。紙を見ながらの手入力なのでミスも多く、ダブルチェックする体制をとっていても、金融機関からの戻しがあることも多かったのです。」
自動化支援では、手書きの紙の口座振替登録申請書を、コージェントラボのAI-OCRソリューション「Tegaki」を使って自動読み込み・データ化し、収納代行業者の決済管理画面へ口座情報登録、Salesforce®上に登録している会員情報と口座情報との紐づけするまでの一連の業務の自動化を、UiPathのRPAソリューション「UiPath Automation Cloud™ for Community」を利用し自動化しました。
「この業務は、1件あたりの作業時間が多くないものの、件数が多いため積み重なると時間がかかり、ミスも出やすいものでした。もともとかかっていた時間は、申請書のスキャンから採番、データの入力作業、ダブルチェックの一連の作業で1件あたり5〜8分かかっていたものが、自動化によって、1件あたり1分くらいで済むようになり、結果として処理時間が80 %短縮しました。また、UiPathのロボットのエラーも少なくTegakiの読み取り精度が高いため、読み取り結果を修正する必要がほとんどなく、ミスや差し戻しが発生しないというのも非常に大きい変化でした。」
これまでは多くの人的リソースを割いていた業務ですが、現在は、繁忙期でも担当者一人でまわるようになり、ダブルチェックをしても2名体制でおこなえるようになったといいます。処理時間や入力ミスが減ったことで、保護者に依頼書を差し戻すといったケースも減ってきていると感じているそうです。また、この業務の処理のために本業の傍らサポートに入ってくれていた人事や経理の担当者も、本来の業務に集中できるようになったといいます。栗林さんと林下さんも、別のシステムの導入や効率化など、より生産的な業務に時間をかけることができるようになりました。
今回の自動化支援を振り返り、TegakiとUiPath Studioの使い心地についてお聞きしたところ、「UiPathは、最初に覚えることは確かに多く、エラーが出るたびにUiPathのチームの皆さんに相談していましたが、変数の設定のしかたなど、コツがつかめればすぐ作れるようになっていきました。アクティビティを検索して、ドラッグ・アンド・ドロップで挿入して、という手軽さが使いやすく、また、実行したらロボットがそのとおりに動く様子は、いざ目の前にすると感動します。Tegakiは、まず読み取り精度の高さに驚きました。帳票を読み込むと帳票全体が表示され、帳票を読み取った結果がそれぞれの項目のすぐ上に出ているので、目検が非常に簡単なのも使いやすいポイントでした。」
UiPathとTegakiの連携については、UiPathのAI-OCR Tegaki連携コネクターを利用し、「最初だけコードを一部直すなどの作業が発生しましたが、そのあとはスムーズでした。最初の困難さえ乗り越えれば、自動化は想像よりも簡単だと感じました」。
「社内では、ロボットがかわりに仕事をしているということに興味を持ってくれる人が多く、UiPathのロボットとTegakiにそれぞれ名前をつけて、社員の一人のように扱う風土ができはじめています。また、それによって少しずつ自動化の拡大も視野に入ってきています。すでに、企業プロジェクトのチームがプログラム実施のたびにおこなうアンケート調査を、Tegakiを使ってデータ化し始めていて、大変好評です。また、現在FAXで受け取っている団体からの申込みを読み取りSalesforceに入力する業務も、UiPathとTegakiを使って自動化できるのではないか、という議論が始まっています。」
今後については、上述の団体申込書のほかにも、経理の定型業務などにも自動化の可能性を感じているそうで、「まずは業務フローの整理などをやっていき、請求書や立て替え払いの領収書精算、支払依頼、振り込み作業など、自動化できるものは少しずつ自動化していきたい」と語る林下さん。「NPOや放課後の運営事業者では紙を扱う業務がまだまだ多いと思うので、AI-OCRとRPAを使った自動化の支援には多くの可能性があると思います。紙の業務があれば、ぜひ自動化を試してみてほしい」
また、今回の自動化支援を振り返って、「NPOなどでは、企業にプロボノで支援していただくことは多いのですが、本業の傍ら支援していただくケースが多いので、こちらもなかなか甘えられない面があり、思ったように効果がでないこともあります。今回の自動化支援では、UiPathとコージェントラボのチームの皆さんが自動化の支援そのものを楽しんで前向きに支援してくださり、ロボットが動くと私達と一緒に喜んでくださったりと、楽しみながらサポートいただけているのが伝わってきて、本当に嬉しかったです。だからこそ、わからないことを気軽に聞けたりして、結果的に効果が出るまで頑張ることができました」と語ります。
変化が激しく社会課題が刻一刻と変化する現代において、社会課題を解決し人々の生活を豊かにするために、非営利団体のデジタル化をはじめとした業務効率化と、 それによる社会課題解決のための時間創出の社会的意義はますます大きくなっています。UiPathとコージェントラボは今後さらに連携を深め、より多くの非営利団体の活動のデジタル化を無償支援することで社会貢献に参画してまいります。
詳しくはこちら
Topics:
教育Japan, UiPath
Landing Modal Subheadline