「本コミッティでは、できる限りオープンに、『生の声』をいただきたい」。2022年7月19日(火)、第一回RPAコミッティは、UiPath金融本部担当部長 河村洋一の挨拶から始まりました。
「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は少ない労働力で高い生産性を維持できるテクノロジーです。金融機関においても2017年から急速にRPAが広まりましたが、5年が経過した現在、RPAを始めとしたDX領域のツールの活用が進んでいる金融機関と、活用が進まない金融機関とで二極化が進んでいるのが実態です。さらに活用が進んでいる金融機関でも、活用の拡大に向けて「案件が見つからない」「開発品質が保てない」等の課題が出てきていると耳にします。
以前は、RPAに関する勉強会やコミッティが頻繁に開催されていましたが、近年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、減少傾向にあります。そこで、業務効率化の事例を共有できる場を作るために本コミッティを立ち上げました。4半期ごとにオンサイトおよびオフサイトで討議する場を設けたいと考えています」
今回のコミッティでお話してくださったのは西日本シティ銀行 総合企画部の加来孝宏氏と続木直人氏。「RPAの失敗学」というテーマでご登壇いただきました。
「弊行では、RPAを4年にわたって試行錯誤しながら活用しています。RPA導入以前は、紙ベースの業務フローや、業務量と人員のアンマッチ、本支店の意思疎通不足などといった問題を抱えていました。
その現状を打破すべく、2018年4月より抜本的な効率化施策である『業務革新」を開始。『業務フロー革新』、『デジタル革新』、『リソース革新』が3つの柱として据えられました。この中の『デジタル革新』のツールの一つとしてRPAの導入を始めました。まずは2018年4~6月にかけてRPAツールを選定。『自治体からの預金調査事務』、『当局報告』、『疑わしい取引報告』の業務で複数のRPAツールを実験導入しました。ここで想定していた効果が出たので、7月~9月にかけて、RPAによって自動化したい業務の選定を行いました。そして同年10月~2019年に、ITシステムを利用部門の担当者で開発していくEUCツールとして、RPAの各部導入を進めました」
着々と進むRPAの導入。ところが、デジタル革新がすぐに成功とはならなかったようです。
「残念ながら、人員減につながるだけの効率化効果は得られませんでした。使われないRPAが野良化してしまい、ライセンスだけが増えてコストが増加しました。さらには部内で自走ができる人材も育ちませんでした。」
その原因について、次のように分析されます。「現状の業務フローが十分に見直されないまま、部署任せの導入を行ったことが失敗に繋がったのだと思います。より効果の大きい広範囲な領域にRPAを活かすことができず、ロボットの稼働状況の全体把握もできませんでした」そこで2020年から2021年にかけて、RPA運営方針の見直しが行われました。業務本来の目的に立ち返り、既存の組織や制度といった抜本的な問題に目を向け始めたのです。具体的には次の4点だったと語られます。
『なくす』、『まとめる』、『かえる』のBPRを徹底し、職務、業務フロー、管理機構、情報システムのデザインにおいて真にRPA化が必要な案件かどうかを再検討。
全体像を把握するためにロボットを一元管理できるサーバー型RPA(UiPathのAttended Robots/Unattended Robots、Orchestrator)による運行管理を行い、運行状況を見える化。
全店での効率化効果が望める営業店業務や、コストのかかるシステム更改までの繋ぎといった、システムに近い管理・運用も実施し、RPAの中央集権化を図る。
行員への教育としてRPA台帳の整備、エラー時対応ルールの制定・引継ぎ、研修体系の整備を推進。
「現在は広範囲を一括管理するサーバー型のRPAのほか、操作が直感的で担当者レベルでも扱うことができるデスクトップ型RPAを併用して運用しています。切り分けとしては、操作の複雑性・効果を加味したうえで、銀行として機密性を担保しなければならない案件にはベンダーを入れ、内製できるものは内製する体制を取っています」
ここから、西日本シティ銀行における具体的なRPA導入事例をご紹介くださりました。
融資決済から実行までは、複数の情報系システムを経由する業務フローとなっており、バッチ処理によるデータ連携に多くの待ち時間が生じていました。この流れを統合しようとすると莫大な費用がかかりますが、RPA導入によりこれらシステムがほぼリアルタイムでデータ連携され、最大160分も業務時間が短縮されました。
稟議書に添付する取引先総合管理表や収益シミュレーション表などを自動添付・自動入力するRPAや、金利権限の自動チェックを行うRPAを作りました。
営業店での個社別検討会などのために手作業で事前収集していた各種情報を自動収集し、当日中に一覧表形式で提供するRPAを作りました。
顧客訪問の前日夜までに訪問予定を入力することで、事前に目を通しておくべき資料(インターネット情報、チラシ、持参資料、ヒアリングシート等)を翌朝メールでデリバリーするRPAを作りました。
これらによる年間導入効果は、約120,000時間に上りました。
「2021年のRPAツール移行後は、各部担当者を決め、UiPathと共同で研修を開催しました。研修では行員に、RPAによって何ができるのかを説明し、画面を見せながら共に学びを深めました。2022年7月のUiPath StudioX(UiPathのビジネスユーザー向け開発ツール)研修には、一般職階から部長職階まで延べ110名以上が参加することになりました」
そして現状を、両氏が語られます。
「『業務革新』の取組みから4年が経ちました。22年度までの目標であった800人をすでに上回る約1,000人分の事務量削減に成功し、仕事のやり方そのものを変える大きな質的変化を組織全体にもたらすことができたと考えています」
続いて自動化の社内推進について、UiPath 村松俊が講演をしました。
「自動化の社内推進の進め方は大きく分けると二つあります。一つ目はプロ開発向きのトップダウンアプローチ。もう一つはユーザー開発向きのボトムアップアプローチです。プロ開発は基幹システムのアクセスなど大規模案件で効果を期待できます。プロの力を用いることで、複雑なシステムを素早く安定的に導入することができるからです。一方で、費用を抑えつつ今現場が困っていることをこまめに解決するために、ユーザー開発は欠かせません。ユーザー開発は個人のデジタルスキルアップや意識改革にも寄与し、将来的なプロ開発のためのアイデア出しにも繋がるので、二つのアプローチは相乗効果を生み出すでしょう」
次に、プロ開発のやり方について「プロ開発は、CoE(センター・オブ・エクセレンス)や外部コンサルで策定した施策を各部に落とし込むトップダウン重視のやり方と、各部から集まった効率化アイデアをCoEに集約して具現化するボトムアップ重視のやり方があります。前者では、全社的・俯瞰的な視点での効率化施策を推進しやすいというメリットがあり、後者には現場の課題解決に直結する施策が発掘しやすいというメリットがあります。組織風土等に合わせて手法を選択することが理想的です」
それから、課題整理とTo-Be業務策定の考え方を説明しました。
「業務負荷の削減だけでなく、業務品質や顧客へのサービス改善等、経営課題との整合性を含めて課題を整理することが大切です。課題整理をもとに標準化・電子化・集約化・自動化といった複数の施策を組み合わせることで、抜本的な業務改革が検討できるでしょう」
実際の金融機関でのユースケースについても、共有がありました。「RPAのユースケースとして、イベント発生時・イベント発生前のアラートや、商談前に確認が必要な顧客情報の整理・準備において、大きな効果が期待できることがわかっています。あるメガバングでは、従来各種システムや帳票などから営業拠点内の対応事項を抽出し、担当者別に整理・回覧する負荷が毎朝発生していました。これをロボットがまとめて確認と通知を行うことで、毎朝のチェック負荷と確認・対応漏れを確認できたのです。
商談事前準備においても大きな効果を発揮します。従来は複数システムから情報を収集する作業に負荷がかかり、かつ収集する情報がバラバラであるという問題がありました。しかしロボットが自動で取得し営業担当者へ配信することで、必要な情報を標準化できます。
そのほか事務領域においても、『要処理事項モニタリング』、『各種日締め』、『各種受付登録・集計資料作成』、『海外送金事務』などで大きな効果を創出できたという事例があります」
「今後も参加者様を増やして、勉強会を行う予定です。UiPathは皆さんと一緒に、問題解決に取り組ませていただきたい」という力強い言葉とともに、第一回RPAコミッティは締めくくられました。
UiPathでは、 金融機関に特化した事例のユースケースやベストプラクティスを蓄積し、金融機関のお客様の自動化によるDX支援を進めています。さらなるお客様事例は下記のページを是非御覧ください。
Japan, UiPath
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