2023年10月24日(火)、25日(水)の2日間で開催された、AI搭載のオートメーションについて発見と思索を深めるカンファレンス「UiPath FORWARD VI Japan」。24日の様子を全3回の記事でお届けしています。第3回目は、UiPath製品のユーザー企業の皆様による「AI at Workパネルディスカッション」の模様をご紹介します。
ヤンマーホールディングス株式会社 取締役 CDO奥山 博史 氏
第一三共株式会社 取締役 専務執行役員 ヘッドオブグローバルDX Chief Digital Transformation Officer 大槻 昌彦 氏
日清食品ホールディングス株式会社 執行役員 CIO 成田 敏博 氏
三井住友信託銀行 取締役常務執行役員 米山 学朋 氏
最初のテーマは「自動化におけるAIの活用」。これまでUiPathでは、業務の生産性向上・効率化のための自動化ソリューションを提供してきました。今後、AIとオートメーションの組み合わせが当たり前となることで、どのような価値や効果が生み出されるのでしょうか。
奥山氏
「まずはスピード化ではないでしょうか。RPAによる自動化でスピードが上がるのはもちろん、意思決定もAIを使って自動化することにより、人間が情報収集をし、考える時間が削減できます。また、出てきた結果を生成AIが文章にして届けるところまでできるとさらに高速化しますね。自動化がシームレスにつながるところを目指していきたいと思います」
成田氏
「これまで人間が行っていたことをAIに任せることで、人間がよりクリエイティブな業務に集中できます。しかも、AIの場合は人間では処理できないほどの膨大なデータベースの中から、最適なデータを見つけることが可能。そこからサマリーにした表を作り出してもらうなどすればかなり便利になります。
今社内で議論しているのは、人によって差の出る作業にAIを活用できないかということ。弊社の例で言うと、スープや麺の調合はマイスターと呼ばれる習熟した人間にしかできませんでした。しかし、これらの経験値を生成AIが読み取ることで、このパターンで調合するとこういう結果が出るのでは?とAIから提案がもらえるのではないかと考えています」
米山氏
「弊社では、新型コロナウイルスの流行によってインターネット経由による新規申し込みが増加してきました。しかし、紙で手続きをしたいというニーズは今も健在です。人が目視でチェックする精度は、平均すると99.99%というところ。これをOCRに任せようとすると90~95%くらいの精度はすぐに出るのですが、金融機関のサービスはたとえ97%でもミスが多い印象となります。
この精度を上げる部分で、生成AIのポテンシャルに期待しています。AIは前後の関係や文脈を理解することで、単なる画像認識とは異なる結果を出力してくれることが分かってきました。精度を高めるための、ラストワンマイルをつなげるポテンシャルがあると思っています」
次のテーマは「AI活用によって、私達の働き方はどう変わっていくのか」。少子高齢化による労働人口減少という課題を抱える日本。AIはどういった役割を果たすのでしょうか。
奥山氏
「弊社も人手が足りずに苦労してきました。RPAやAIを使いこなすことで、現状の人数のまま、ポテンシャルを高められたらと期待しています。人を増やさずとも余剰時間ができれば、これまで定型業務を行っていた社員が、ワクワクできるような仕事にシフトできたり、心理的負担を抑えたりできるのではと思っています。ただ、時間をかけることでしか付加価値を出せなかった人は、戦い方を変える必要があります。人間へのプレッシャーは大きくなるかもしれませんね」
大槻氏
「RPAやAI活用により、時間を取られている部分の削減ができれば、人にしかできない生産的な部分に人員を割くことができます。
今、製薬業界はこれまでよりも複雑な薬を作る方向に変わってきています。しかし、新たな取り組みに割ける人員が足りず、その人員をどう埋めていくかが課題でした。RPAやAIによって、従来業務に割いていたリソースをシフトできればと思っています」
成田氏
「弊社では半年前から本格的に生成AIを使い始めましたが、全社の利用率は25%ほど。これをどう引き上げていくかが課題です。ヘビーユーザーに話を聞くと、何かあればとりあえずAIに投げてみて、使えたら良し、使えなかったら自分でやる、ということを日常的に行っていました。一方、利用していない人は、生成AIへの期待値を高く持っており、期待できない答えが出るとガッカリして使わなくなっていたようです。完璧を求めず、どんどん使って可能性を探ることが普及への鍵かもしれません」
米山氏
「弊社では社内副業の取り組みを開始して2年が経ちます。最も多いのは都市圏以外に勤める従業員が都市圏の業務を行うケースで、非常に好評です。AI活用で余剰時間を確保すると、しばりつけられていた業務から解放され、個人の選択肢も増えていきます。社外での活動を含め、副業は今後広がっていくのではと思います。
最後のテーマは「DX人材の育成」です。DX化を推進し、実行するために欠かせないDX人材。知識や技術を持っているほかに、求められることは何でしょうか。また、対象者はどのように選定するか、など各社の考えをお聞きしました。
大槻氏
「弊社では、IT技術がありデータを活用できるだけでなく、ビジネスのことも分かる人間をDX人材と定義しようとしています。データ分析だけをしていては、現場の問題点が分かりません。
育成に関しては、2本柱で行っています。まずは全体の底上げ。ITパスポートの取得を会社で補助する取り組みを行っており、昨年は2,000人が受験しました。もうひとつは、ビジネスごとに必要なDX人材の育成です。各ビジネスのバリューチェーンごとにニーズが違いますので、それぞれにあったDX人材を定義し、育てています」
奥山氏
「大槻さんのおっしゃる通り、何がお客様の価値につながるか、どうしたら生産性が上がるかを一番分かっているのは現場の人間ですので、当事者が自分達に必要なソリューションを考え、自分で開発できるようになることが大切です。最終的には社員全員がDX人材になることが理想ですが、まだまだ難しいのが実情。まずは、興味のある人達をサポートし、現場のユースケースを作りながら全体を底上げしたいと思っています。隣の人が取り組んでいるのを見て“何やら役に立ちそうだな、自分もやらないとまずいぞ”と思ってもらい、輪を広げていくやり方ですね。」
米山氏
「弊社には社員が13,000名ほど在籍しますが、その半数の6,500名を、弊社の定義するDX人材にしていく計画を掲げています。
取締役会で1年以上議論を重ねましたが、半数はいないとテクノロジーのムーブメントに周回遅れ、もしくは脱落してしまうという考えから、トップダウンで決定しました」
成田氏
「業務領域で言えば全社のあらゆる部門を対象としていますが、基本的には希望する人間を対象としています。希望するからには素質があると捉えていますし、若い人間も参画しやすいからです。今の20代は当たりまえのようにデジタルツールを使ってきた世代ですので、もしかするとIT部門で経験を積んだ人間よりも高いリテラシーで進めていけるのではと思っています。
また、弊社は経営層も新しい技術に寛容です。今のやり方を壊して新しいやり方にしなければ自分たちは負けてしまうという意識を、トップ自身が強く持っています。最新の技術に対する感度も高く、失敗しても良いからまずやってみろと言ってくれる。DX人材が育ちやすい環境だと感じています。」
AI×オートメーションをテーマに、パネルディスカッションを行いました。オートメーションに意思決定のできるAIを組み合わせることで、人手不足の解消や、従業員の働き甲斐向上に貢献するという意見が各社共通の見解でした。
一方、DX人材の育成に関しては、全ての従業員を対象とすることが理想ではあるものの、まずは意欲のある人材から徐々に育成対象を広げていくのが現実的といった意見が多く見られました。
これまで、「UiPath FORWARD VI Japan」の模様を、3回にわたってお届けしてきました。AIとオートメーションの組み合わせは、我々の想像を超えた可能性を秘めています。顧客満足度が向上するだけでなく、従業員の働き方にも変化が生まれ、ビジネスの新たな形が生まれるでしょう。今後もUiPathは、AIやオートメーション、新しい働き方に関する最前線の情報をお届けしてまいります。
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Topics:
イベントJapan, UiPath
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