11月11日(木)~12日(金)2日間に渡り開催された、UiPath最大のフラッグシップイベント「UiPath FORWARD」。本記事では、この中から「デジタル変革者講演」と題して登壇された、エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社、株式会社セブン-イレブン・ジャパン、日産自動車株式会社の3名のデジタル変革についてご紹介します。業態の異なる3社それぞれの、まさに進行中事例の課題や現状、そして未来について語っていただきました。
エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 常務執行役員 長谷川卓氏
エヌ・ティ・ティ・コムウェアは、2022年1月にドコモグループの資本傘下となり同年7月1日には組織統合。ドコモグループのコンシューマ通信・スマートライフ・法人の3事業に対してITを活用し、いかに企業価値を最大化するかという視点で支援しています。
「私たちのデジタル戦略は、グループ内の業務標準化によるデータ統合・活用により、データドリブン企業への変革を目指します。この数年、一気にリモートワークを主体とする働き方に変化したことで、自分・会社・お客様の課題がわかりにくくなっています」と長谷川氏は課題を提示。しかしこの点は「データ駆動型に変えれば解決する」と断言します。
またパートナーとの関わり方も変化が求められると長谷川氏。「デジタル空間でパートナー企業と共にサービスを提供して、顧客体験の価値向上、価値創出を目指すには、すべてのデジタル化・自動化が必須です。そのために私たちは今、グループ内の基幹システムの統合という大規模なプロジェクトに取り組んでいます。
もちろん基幹系システムだけでなく、従業員がもっとも頻繁に活用するExcelやチャットといったツールなど、会社内のすべてのデータ化も実施。RPAやプロセスマイニングツールを駆使して従業員が価値を発揮できるようなデータの民主化をしたいと考えています」
長谷川氏は、これからIT部門の役割は大きく変化するといいます。「クラウドサービスが中心になり、今後は世の中にあるクラウドサービスをどう組み合わせて企業価値につなげるかがIT部門の役割になるでしょう。環境変化の激しい現代において、経営はどんどん変化しますので、それに追随して柔軟に中身を変えていく必要もあります。そういう意味では、コンポーザブルなグループITを創造することへチャレンジしていきたいと考えています。
IT部門は、これまでように“モノを創る”という視点から“価値創造”へと視点をあげる時がきました。経営の重要なパーツであり、そこには責任も生じます。デジタルを武器に自ら価値創出する組織文化を創りあげたいです」
株式会社セブン-イレブン・ジャパン 執行役員 システム本部長 西村出氏
2023年に50周年を迎えるセブン‐イレブンは現在、全国店舗数21000店を越える規模で展開。地域社会の利便性を追求し続け、お客様が暮らしの中で安心してお買い物ができることを目指しています。
2023年には創業 50周年を迎えますが、セブン‐イレブンを支えてきたのは時代の変化を敏感に捉えスピーディに対応する「変化対応」と、「お客様のために」ではなく「お客様の立場」で考える「お客様目線」という2つの視点です。これは今後も変わらないと西村氏は言います。
「私たちは創業黎明期からITに積極的でした。しかし加盟店様が1万店舗を越えた頃からシステムは巨大化。まさにレガシー化が拡大していきました。一方お客様側はスマホなどの進化により一気にデジタル化が進み、企業側の変化が遅れはじめ、今まさに“2025年の崖”に直面しています」
ここを乗り越えるために、計画的にデジタル化に集中。DXでスピード感のある商品開発、新しいお買い物体験、業務効率化、省エネ対策等多方面な施策に寄与したいと考えています。
「崖を越えるための手段は両輪です。1つは基幹系システムの抜本的刷新と構造改革によるDX。もう1つは、直近の身近な課題をスピーディに対応していくこと。現場における小さな解決・成功体験の繰り返しが、ユーザー部門との良い連携につながり重要だと考えています。それにはRPAが非常に有効で、スピードアップ、コスト削減を実現できてきました」
今後は、ノウハウのデジタル化の取り組みを計画しています。
「企業の中にある貴重なノウハウをデジタル化して伝承していく。これが可能になれば、1対1でしか伝えられなかったノウハウを、一度に1千人、1万人に伝えることができ、早期に企業全体のレベルが向上できると考えています」
「お客様に“今”を満足していただき、“未来”に先回りした新しい体験の創出に貢献したい。それをITやDXで支援していきたい」と展望を力強く語ってくださいました。
日産自動車株式会社 デジタルトランスフォーメーション推進部 部長 蓬澤健一氏
2021年11月に「環境問題や社会課題、そして変化するお客さまのニーズに対応。よりクリーンで安全、インクルーシブな誰もが共生できる社会の実現と、真に持続可能な企業となることを目指す」という長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表した日産自動車。
ISIT部門の中期経営計画として「Nissan Digital Next」をスタートして2年目になります。
「IS中期経営企画の3つのピラーは、基幹システムのモダン化。データを活用したお客様への新しい価値提供。そして、徹底的な業務効率化です。尚、業務効率化の具体策として、パソコン等の機器の刷新、リモート環境の整備、RPA等を活用したプロセスの自動化、データの市民化などに取り組んでいます」
日産自動車では、2018年に生産技術部門でRPAの活用がスタートしました。その後いくつかの部署で個別に取り組みがはじまりましたが、全社台でナレッジ共有やライセンス効率化を行い、効率的な推進を行うために、2021年から社内に全体統括や啓蒙、育成などを行うIA-COEを立ち上げ、3カ年計画の全社展開を開始しました。
「ポイントは、ガバナンスをきっちり整理した上で、コントロールとプロモーションのバランスをとること。市民開発についてはUiPathと協業してハンズオントレーニングを積極的に実施しました。さらにRPA Labo、寄り添いサポートを行う部署も設置。市民開発のよろず相談として、開発時や完成後の不具合、新たに作りたいという声にすぐに対応できるようにしています。」
全社展開の2年目となる現在、市民開発者は毎年何百人と増加傾向にあるものの「まだまだ裾野が広がっていない。言い換えれば、まだまだ適用可能な業務領域が残っている。」というのが蓬澤氏の認識です。
「全社アンケートの結果では、社員の半数はRPAという言葉を聞いたことがあると回答しており、また、そのほとんどの方は有効性も感じています。ただ実際に私たちの活動を知っているのは2割程度。さらに実際に開発している人を知っているという人は1割を切ってしまいます。そのことからも、もう少し現場へのダイレクトなコミュニケーションが必要だと実感しています」
蓬澤氏は、今後の展望として「RPAを単なる一過性のパッチワークツールとして考えるのではなく、新しいデジタルツールとのインテグレーションはもちろん、デジタルレイバープラットフォームとしての昇華についても、UiPathと、さらに興味をお持ちの企業の方々がいらっしゃれば一緒に検討していきたいですね」とまとめられました。
講演終了後は、パネルディスカッションを実施。登壇者のお三方が未来の展望とUiPathへの期待を語る一幕がありました。
長谷川氏「ITは標準化が進み、組み合わせが自由になり、いろんな企業を渡り歩いて経験値を積む技術者が増え、大学でもデータサイエンスなど学べる環境が整っています。企業側がそうした知識や技術を持つ人に応える環境を整える必要性にも迫られていると感じています。また、いずれは誰もが、RPAをはじめとした自動化技術をWordやExcelと同じように使いこなせるようになる必要性が出てくるでしょう。そのためにはリスキリングでしっかり学べる環境なども必要になると思います。UiPathには、企業のソリューションだけでなく、社会全体へのソリューション提供を視野に、より製品・サービスを充実させてほしいと期待しています」
西村氏「経営からはIT、DXで何ができるか提案がほしいと求められています。全力で取り組む一方で、 あまり大規模になると時間がかかりすぎる。まずは一つひとつ地道に、 小さい成功を積み重ねていくことが重要だと思っています。ユーザー部門が間近で成果が上がっている様子を見ることで、IT部門との連携も良くなってきます。UiPathへの期待は、ローコードとはいえ、やはり一般的なユーザーやシステム部門初心者には難しい点はあります。あまりにも乖離があると社会実装や企業内の活用も遅れてしまうので、ぜひスマホのように直感的に使えるようなツールになっていくことを期待しています」
蓬澤氏「まだまだデジタル化の変化の激しい中、人材確保やスキルをつけるところは相当苦労しているのが本音です。同じように苦労されている皆さんと、ぜひ意見交換させてほしいと考えています。また今、市民開発を推進していて、いろんな場所でいろんなロボットが動いているのを目の当たりにしていますが、実はUiPath Orchestrator上では、すべてが繋がっているんですね。さらに可視化もできています。これは私たちとしてもUiPathとしても、さらなる効率化のヒントにつながると思っています。ぜひ一緒にその先を検討させてほしいと期待しています」
ファシリテーターを務めたUiPath鈴木・宮川は、「皆さまからいただいた多くのご期待に責任の重さも感じる一方で、非常に前向きに、製品や会社の可能性を大きく気付かせてくださったと感じています。基幹系システム周辺でも活用でき、Excelやパワポ、スマホのように使いこなせるもの。その幅はものすごく広いですが、私たちの製品のポテンシャルでもあると誇りに感じ、勇気づけられました。これをお客さまと一緒に考えて動いて貢献していきたいです」締めくくりました。
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