UiPathが2025年3月に発表した「UiPath Community MVP 2025」の1人に、田辺三菱製薬プロビジョン株式会社 デジタル事業部 部長の佐々木 孝之さんが選出されました。佐々木さんは田辺三菱製薬グループにおいて、UiPath製品をはじめとしたデジタルツールを使った業務の自動化や市民開発の取り組みをリードするCoE(Center of Excellence)組織を統括しています。佐々木さんに、CoEの活動を始めることになった背景やそのきっかけをつくったUiPathへの思い、エージェンティックオートメーションに期待することなどをうかがいました。
佐々木さんは現在、田辺三菱製薬グループにおいてUiPath製品を使った業務自動化の取り組みをリードするCoE組織の長を務めています。この組織では、現場の社員が自ら進めるUiPathのロボット開発を支援するほか、デジタル人材を育成するための施策を実施するなど、人材育成にも力を入れています。通常のUiPath研修の加えて策定した高度開発者プログラムは2025年4月時点で269人が受講し、社内認定資格取得者もすでに230人を超え、すべてのデジタルツール研修では延べ2,000人が受講しているといいます。
「CoEのミッションを突き詰めていくと、『人材育成』に行き着くと思っています。日々、人の成長にかかわれるというのはとても素敵なことです。自分が携わった市民開発者がロボットを作れるようになったとか、デジタルを面白いと思えるようになったという場に立ち会うと最高の気分を味わえます。こんなに幸せな仕事はないですね」。
CoEの仕事のやりがいについて熱く語る佐々木さん。しかし、もともとITとはほぼ無縁の世界に生きてきたといいます。
転機が訪れたのは30代半ばの頃。当時のご自身を「ITの知識もビジネスのノウハウも、そこまでない人間だった」と振り返る佐々木さん。今でこそCoE組織をリードしUiPath Community MVPとして押しも押されもせぬ存在ですが、そんな時期があったとは意外です。これまでご自身がどのように考えてどう行動してきたのか、佐々木さんのお話は大変興味深いものでした。
転機というのは、尊敬する上司からビジネススクールへの入学を後押しされたことでした。「その上司から多くのビジネススキルを教えていただいたが、自分はその上司に十分なお礼ができていないと感じていました。ビジネスに強くなって恩返ししたいと感じ、入学することに決めたのです」。
ビジネススクールに通う中で、佐々木さんは「企業の業務生産性向上や組織改革が自分の強みなのだ」と、ご自身の得意分野を見いだします。
「会社の業務生産性向上や組織改革、最終的に日本経済全体の発展に貢献するために自分は何ができるか、徹底的に考え抜きました。そうしたイノベーションにはITの活用が不可欠だとの結論に至ったものの、私自身にはITのバックグラウンドがなく、使える武器を持ち合わせていないことにジレンマを感じていました」。
ITでイノベーションを起こしたい思いはあっても、手段がない――。こうした葛藤を抱えて悶々としていた2016年の末、佐々木さんは偶然にもRPAの存在を知ることになります。「『求めていたものはこれだ!』と、まさに運命の出会いでした」。
「RPAは誰もが手軽に使えて成果が出やすく、かつさまざまな部署で使うことができます。デジタル化による生産性向上の効果を確実に上げられる技術だと感じました。さらに、ロボット開発を通じてプログラミング思考を身に付けられるという点も魅力的でした。これからの時代は、プログラミング思考を修得したデジタル人材をより多く育成できた企業が大きく飛躍すると考えています。UiPathのようなツールはデジタル人材の育成の手段としてうってつけでした」。
さっそく周囲を説得してUiPathを導入し、より多くの部門でそのメリットを享受してもらうべく、全社横断型のCoEを組成。UiPath製品の全社展開プロジェクトに乗り出しました。このプロジェクトに関する社内説明会で、佐々木さんは「ロボットによる業務自動化の目的として『コスト削減』を前面に押し出すと失敗する」と見越し、「デジタル人材を育成したい。未来へ向けた投資をしたい。」という気持ちをアピールしたといいます。このCoEとしての考え方は、どの会社にとっても参考になるのではないでしょうか。
「先にお話したように、これからの時代はデジタル人材を多く輩出した企業こそが伸びていくでしょう。社内説明会でもそれを伝え、『そのための入り口として、UiPath製品が最適ですから、皆さん使ってみませんか?』と強く呼び掛けました。社員たちは『おもろい!』と思ったようで、このプロジェクトに共感してくれました」。
佐々木さんらCoEの熱心な取り組みにより、田辺三菱製薬グループ内に「新しいデジタル技術は“仕事を奪うもの”ではなく“自分たちを助けてくれるもの”」(佐々木さん)という認識が根付いていきました。現在では多数の社員が研修プログラムを履修し、デジタル人材として活躍しています。冒頭で示した社内認定資格取得者約230人中、50人は「できない操作がないレベル」(佐々木さん)の1級取得者だといいます。
佐々木さんは「市民開発にはCoEの役割が極めて重要です。CoEをサービス業、現場の開発者を顧客と定義し、カスタマーサクセスを最重視しています。ノーコード・ローコードといえども、やっていることはプログラミング。日常業務を抱えながらチャレンジする現場の開発者への質の高い研修、開発支援、エンカレッジ、部品提供など、市民開発とは現場の開発者と事務局の二人三脚の活動。また、市民開発の取り組みを社員に上手に伝えるストーリーテラーのスキルも大切」といいます。
現在CoEでは、UiPath以外のデジタルツールの教育と活用支援も実施しています。新しいツールを展開すると真っ先に手を挙げるのは、UiPathの研修を履修した社員たちだそうです。「君も来てくれたの?あなたも?」。初回の研修に集まった多くは見知った顔ぶれでした。『UiPathはデジタル人材育成のツールとして最適』という仮説のもとに自分が進めてきたことが、やはり正しかったのだと佐々木さんは感慨深げに語ります。
「UiPathを導入したおかげで、『デジタル人材を育成する。そのデジタル人材が大きく活躍する』という目的は着実に達成しつつあります。研修を履修した社員は、決して強制的に“やらされている”わけではなく、『ロボットで自動化することが楽しいからやっている』ように見えます。やはり何事も楽しみながらでないと、なかなか長続きしないのではないでしょうか」。
UiPathとの出会いを機に、田辺三菱製薬グループのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきた佐々木さん。「UiPath Friends」をはじめとするUiPath公式ユーザーコミュニティへの参画やイベントへの登壇など、社外における活動にも積極的に取り組み、ご自身が蓄積してきたUiPath製品・推進に関するノウハウを外部へ共有しています。
「UiPath製品を使わないのは本当にもったいないと感じています。より多くの企業がUiPath製品を有効に使うためのヒントをコミュニティを通じて提供し、ひいては日本経済全体の発展に貢献できればと考えています」。
社内外を問わずに人を動かすその熱量を認め、UiPathは2025年度のMVPに佐々木さんを認定いたしました。その報を聞いた当初、佐々木さんは「MVPは“ゴリゴリのエンジニア”が多い印象だったので『自分の実力で何ができるだろう』と思っていました」と、少々逡巡したといいます。ですが、「UiPathに恩返ししたい」という一心から、MVPとして「自身がこれまで培ってきたCoE運営のノウハウをできるだけ多くの企業に伝授したい」と考えを切り替えました。
「UiPathと出会っていなければ、今のような人生は歩んでいません。自分の思いを叶える手段を手に入れることができず、いまだに悶々としていたでしょう。UiPathは私のキャリアを大きく切り拓くきっかけを与えてくれました。その恩に報いるためにも、自分にできることがあれば協力させていただきたいです。私のやり方が合う企業さまにはCoEの取り組みを共有したいですし、UiPathとコラボして開発者のレベルの底上げにも携わっていきたいです」。
今後、さらなる業務の自動化を実現する上で、佐々木さんはUiPathの生成AI技術にも期待を寄せます。UiPathでは現在、「ロボットによる業務の自動化」と「AIエージェントによる判断」を組み合わせ、業務フロー全体をEnd to Endで自動化する「エージェンティックオートメーション」というソリューションを打ち出しています。
これまで多数のロボット開発や業務の自動化を手掛けてきた佐々木さんから見たエージェンティックオートメーションのビジョンは、「RPAを活用する中で追い求めていた進化形」だといいます。
「これまでの業務の自動化は、人間の判断が必要な処理がある場合は、自動化できる部分を切り出して自動化していたため、業務プロセス全体の自動化までには至っていませんでした。しかし、エージェンティックオートメーションによって人間に頼っていた判断を生成AIで代替できるようになれば、業務プロセス全体を自動化できるようになります。これからは、“タスクの自動化“から“プロセスの自動化”へと大きく進化していくことになるでしょう」。
生成AIとロボット開発ツールが密接に連携することで、一般ユーザーにとってのロボット開発作業がより身近なものになり、業務自動化の取り組みがさらに加速するのではないかと佐々木さんは見通します。
「すでに『UiPath Autopilot』で生成AIを使ったロボット開発の効率化が実現されていますが、もう一歩踏み込めば面白い世界になりそうです。ユーザーが自動化したい業務を自然言語で説明し、生成AIがそれを高い精度でRPAのワークフローを生成してくれるようになれば、ロボットの開発スピードや保守性が飛躍的に向上します。それが一定レベルの水準に達すると、市民開発が一気に加速すると期待しています」。
新しいデジタル技術は“自分を助けてくれるもの”という認識が社内に浸透している同社ならば、生成AIもエージェンティックオートメーションも導入・活用が円滑に進んでいくに違いありません。
左:UiPath株式会社 パートナー営業本部 第三営業部 パートナーマーケティングマネージャー 菊地原 清子
中央:田辺三菱製薬プロビジョン株式会社 デジタル事業部 部長 佐々木 孝之様(UiPath Japan MVP)
右:UiPath株式会社 パートナーマーケティング&コミュニティマネージャー 渡辺 俊平
・X: https://x.com/takasan_sasaki
・LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/takayukisasaki/
Japan, UiPath
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