Summarize:

UiPath製品を活用するユーザー同士が交流し学習するUiPathコミュニティでは、メンバーが世界各国で活発に活動しています。UiPathは、コミュニティをリードするプロフェッショナルを毎年認定するMVP (Most Valuable Professional) プログラムを提供しており、今年も「UiPath Community MVP 2026」として世界35ヵ国から135名が認定されました。今回は日本からMVPに選ばれた6人の方に、自律的に業務を遂行するAIエージェントとロボット、そして人が三位一体となって業務をエンド・ツー・エンドで変革する仕組み「エージェンティックオートメーション」について、現場での導入価値や課題、今後の展望をうかがいました。
MVPに選出された方々は、RPA(Robotic Process Automation)の提供初期からUiPath製品に豊富な知見を持ち、現在はエージェンティックオートメーションの活用においても現場の議論をリードしています。
まず、多様なユースケースが見込まれ注目を集めるエージェンティックオートメーションの登場をどう見るか。ITソリューションサービスを提供するコベルコシステムのエンジニアである眞鍋忠喜さんは「ロボットはさまざまな作業を代行しましたが、ロボットをどう動かすかという指示までをAIエージェントができるようになった。時代の変化が速いと感じます」と、驚きを隠しません。

コベルコシステム株式会社
眞鍋 忠喜 氏
6人の中で唯一、IT企業ではない田辺ファーマプロビジョンに所属する佐々木孝之さんは、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)を用いてAIエージェントをノーコード・ローコードで構築でき、ロボットとの連携も可能なツールである「Agent Builder」に衝撃を受けたと話します。「自分でAIエージェントを作ってみて『すごい時代になったものだ』と感じました」。佐々木さんはUiPath製品をはじめとしたデジタルツールを使い、自社の業務の自動化を支援・統括するCoE(Center of Excellence)として大きな実績を上げてきました(参照:https://www.uipath.com/ja/blog/uipath-japan-story/community-mvp-mt-pharma01)。

田辺ファーマプロビジョン株式会社
佐々木 孝之 氏
「私もAIエージェントを自作できるツールの登場に感動しました」。独立系SIerのクレスコでUiPathのビジネスをけん引する吉田将明さんも、二人に同調します。UiPath Agent Builderは、IT分野の専門家ではなく、ビジネスの現場の方々が中心となってシステムを構築する“市民開発”に極めて有効なツールだと、吉田さんは話します。
吉田さんは市民開発者の支援をするなかで、AIエージェントの構築はハードルが高いと感じていたそうです。しかし、Agent Builderを知って考えが大きく変わったといいます。吉田さんが最も評価している点は、プロンプトエンジニアリングをサポートする機能。生成AIに対する質問文であるプロンプトを、ユーザーがあいまいな表現で指示しても適切な形に生成してくれる点に価値を感じたそうです。

株式会社クレスコ
吉田 将明 氏
「局所最適とも言えたロボットによる業務自動化を着実に進めてきたUiPathが、プロセス全体の自動化を推進する仕組みを出してきて、『やっと来たか』と思わずうなずきました。業務の一部分からプロセス全体への自動化に、企業の目が向くようになるのです」。吉田さんは、エージェンティックオートメーションを実現するオーケストレーション基盤「UiPath Maestro」によって切り開かれた境地をこう表します。Maestroは、AIエージェントとロボットの接続、そして人による判断を交えたワークフローを、容易にモデル化して連携できます。
業務にAIエージェントを取り入れようと考えるなら今が絶好のチャンスだと話すのは、SIerであるTISでUiPath製品のプリセールスなどを担う矢倉峻さんです(参照:https://www.uipath.com/ja/blog/uipath-japan-story/agentic-automation-community-mvp-tis01)。生成AIがトレンドとなっている現在、経営陣から予算を確保しやすく、周囲の理解も得やすい追い風が吹いています。だからこそ「今、取り掛かるべき」と訴えます。

TIS株式会社
矢倉 峻 氏
一方で、エージェンティックオートメーションの導入にあたって、企業はどのような準備をすべきか、MVPの方々に課題を含めて聞いてみました。
「プロセス全体を自動化する点自体が導入の壁になるケースもあるのでは」と、関西電力グループの情報通信事業者であるオプテージで、自社および顧客向けの業務自動化支援を担う末武陽一さんは指摘します。Maestroの最大の特徴は、エンド・ツー・エンドで部門を横断するプロセスを自動化できるという点です。しかし、企業では業務プロセスが部門に閉じている場合が往々にしてあり、エンド・ツー・エンドの自動化を実現しようとするとプロセス全体の見直しが必要になりがちです。現場が慣れ親しんできた仕事の流れをどう変えていくか、企業としての考え方が問われることになります。

株式会社オプテージ
末武 陽一 氏
矢倉さんは、UiPathが世界各国で開催しているイベントに複数参加してきた経験から、「日本では、現場の試行錯誤によって業務のオペレーションが複雑化しているケースが多い」と国内固有の課題を挙げます。業務には現場の暗黙知が含まれていることが多く、それを可視化して全体の自動化を設計・構築していくには、現場の協力が不可欠です。「現場はやはり忙しいです。システム部門が現場の理解を得やすい関係が望まれます」と語ります。
さらに矢倉さんは、ロボットを活用した業務自動化の成功体験にとらわれたままエージェンティックオートメーションを取り入れるのは危ないと警鐘を鳴らします。一部の業務を自動化するロボットと全体の自動化を可能にするエージェンティックオートメーションは「まったく違うもの」だからです。「前者での業務自動化は時間・人員削減という点で効果をすぐに実感しやすいですが、後者は速効性を期待しすぎないほうがよいでしょう」。PoC(Proof of Concept:概念検証)によって一部の業務を切り取り部分的な効果を確かめた上で、全体へと導入を拡大していきます。PoCではうまくいったように感じても全体に適用するとなると別の話になる可能性があります。
矢倉さんは、トライ・アンド・エラーで根気強く取り組み、徐々に精度を高めて成果を出していくという心構えが必要になると指摘します。ロボットでの自動化のように短期間で定量的な成果を上げようとすれば、思ったようにいかないと感じることがあるかもしれません。
吉田さんは「表計算ソフトに過度に依存した業務運用」を課題として挙げます。チームで表計算ソフトなどを用いてデータ管理と進捗管理などを行っている現場は多いはず。これらをそのままでMaestroによってプロセス自動化を進めようとすると「目も当てられない状況になり得る」と指摘します。業務の見直しを含めて再設計することを進めていけば、市民開発もレベルが一段上がる可能性があります。
こうした課題を乗り越えて得られるものは何でしょうか。
末武さんは、まず身近なものとして「法務部や経理部といった専門知識が必要な部門の業務を、現場のワークフローでAIエージェントが実現できるようになる」と例を挙げます。近年、これまで共通部門で処理してきた作業を現場に代行させる傾向がありますが、専門知識のない現場では間違いが起こりがちです。これをAIエージェントに任せることができれば、精度が高く迅速な処理が可能になる、との見方です。現場においてどのようなミスがあったのかなどの情報をAIエージェントが学習していけば、さらなる精度の向上も見込めるでしょう。
富士ソフトでエージェンティックオートメーションの研究開発にいち早く取り組んできた塩見潤さんは、「Maestroが業務プロセスの司令塔になることで、エンド・ツー・エンドでプロセスが自律的に動くように進化する」と見ています。例えば、顧客からの申し込み、審査、請求、サポートといった一連の長期間にわたる業務をバックグラウンドで実行し、必要に応じて人の作業が介在するイメージです。つまり、人が業務を回す組織ではなく、プロセスが自律的に回る組織です。「数年先には、企業の業務そのものをエンドツーエンドの自律型プロセスへと進化させる基盤になるのではないでしょうか」

富士ソフト株式会社
塩見 潤 氏
佐々木さんは「すべてのオペレーショナルな業務がMaestroで自動化できるようになるのでは」と将来を見据えます。「業務が人に紐付きすぎて、その人がいなくなったら仕事が回らなくなる」という日本企業にありがちな現状を、MaestroがAIやロボット、そして人を動かすような“Maestroドリブン”によって打破したいと希望を語ってくれました。
Maestroドリブンが進めば、「日本人の得意分野である“カイゼン”が進む」と佐々木さんは予測します。Maestroでプロセスを定義すれば、業務のリードタイムやスループットを数字で明確にすることができます。「ボトルネックが可視化されるので、そこからカイゼン魂が呼び起されて、業務改善につなげていけるのではないか。そうしたサイクルが生まれだすと日本人は強いです。その点でMaestroは日本人に合ったツールだと思います」。
エージェンティックオートメーションは、UiPath製品に詳しいMVPの方々にも、大きな衝撃を与えています。AIエージェントを用いた業務自動化にとどまらず、企業全体の変革に期待がかかります。それだけに、導入から構築、成果を得るまでのプロセスは単純でないことが容易に想像できます。ブログの後編では、エージェンティックオートメーションによる組織や人材への影響に焦点を当てるとともに、この新しい技術を活用していくにあたり、UiPathコミュニティに参加する意義をMVPの方々にうかがいます。
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Japan, UiPath
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