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業務の削減を目指す時代からAIで価値創造へ~金融業界が見据える「ロボット×AI」の可能性とは~

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業務の削減を目指す時代からAIで価値創造へ ~金融業界が見据える「ロボット×AI」の可能性とは~

膨大な事務作業や、厳格なコンプライアンス対応に追われる金融業界。そうした中でも新サービス創出や顧客体験向上への期待はますます高まり、自動化による業務改革は喫緊の課題と言えます。UiPathは、ロボットによる自動化で金融業界をサポートしてきました。今後は、AI(人工知能)との融合で改革の目標を引き上げ、働く人々が新たな価値創出に専念できる支援のかたちを作り上げようとしています。今回はUiPathの先進ユーザー企業の事例から、AI時代の金融業務自動化の現状や、その先に描くビジョンに迫ります。

業務に応じて使い分ける

「ロボット×AI」の最前線

先進的な金融機関は、すでにさまざまな業務においてAIを活用した改革に乗り出しています。まず、いくつかの事例を紹介しましょう。

JPX総研/日本取引所グループは支払い承認などの業務にロボット×AIが稼働しています。2025年4月から、自然言語による指示で業務プロセスを自動化できる「UiPath Autopilot for Everyone」の利用を始め、2カ月ほどで本番運用に至りました。請求書のPDFファイルをドラッグアンドドロップするとAIが動いて、誰から誰への請求か、金額はいくらか、円かドルかといった業務に必要な情報が抽出されます。その後はロボットが自動でERP(統合基幹業務システム)に抽出したデータを入力してくれるので、それを人間が確認すれば業務は終了です。

「従来は人手で複数のPDFファイルを開いて目検確認でERPに入力していましたが、ロボット×AIによって業務が自動で流れるようになりました。それにとどまらず、AIによる自動化(Autopilot)を推進するにあたり、必然的に業務プロセスの標準化に取り組むことになるため、各担当者に散在していた知識やノウハウを集約でき暗黙知の見える化が実現できました」と、同社の太子智貴氏はAIの効果を説明します。

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JPX総研/株式会社日本取引所グループ

ITビジネス部課長 生成AIチームリーダー 太子 智貴氏

SBI新生銀行はAIによって住宅ローン審査項目を自動抽出し、審査業務の効率化を図る取り組みをUiPathと検討しています。同行はこれまでにも、生成AIガイドラインの規程整備を通じ、全社員が生成AIを活用できる環境を整え、自社情報を生成AIから検索できるようにするRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)の活用も進めていました。

同社の小野里啓志氏はその狙いをこう話します。「住宅ローンの申し込み件数が年々増加する中、業務効率化と人材の最適配置が重要なテーマです。現在、受付業務はロボットで自動化していますが、次の改善余地として、非定型書類から審査項目を抽出する工程に『UiPath Document Understanding』の導入を検討しています。AIによる文書処理を活用することで、書類確認の手間を削減し、審査業務のスピードと精度を高め、人的リソースをより付加価値の高い業務へシフトできるよう目指しています」。

PayPayカードもDocument Understandingを活用することで、業務の生産性向上に成功しました。弁護士や裁判所から届く様々なフォーマットの書類は人の目検で確認せざるを得ず、この作業が業務効率化の足を引っ張っていました。Document Understandingの導入により課題を克服できたことについて、同社の丸山秀樹氏はこう明かします。「現場では別のAI-OCRの導入を進めようとしていたのですが、我々の提案でUiPath製品を使うことになりました。結果として、機能面だけでなく導入コストの面でも大きなメリットがありました」。

顧客接点も自動化

AIが支える体験価値の創出

社内の業務だけでなく、AIを活用した顧客に対する業務改革も始まっています。カード・融資事業を手掛けるオリエントコーポレーションでは、コールセンターに寄せられた顧客の声から自動的にFAQを生成するAIについてUiPathと共同研究しています。同社の嶋本正治氏は、「生成AIは単なる文章生成アシスタントではない」とし「いかに活用を業務につなげていくのか」に重きを置いていると強調します。

「目下は、お客さまの体験価値の向上やコスト最適化、業務自動化をAI活用でさらに進めているところです。ある程度の精度が得られたら、自動的にお客さまの問い合わせに回答するデータベースができ、将来的には自動応答できるAIエージェントにつながると期待しています」。

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株式会社オリエントコーポレーション

常務執行役員 オペレーショングループ長 兼BPX推進室担当 嶋本 正治氏

PayPayカードも2025年3月、カード利用代金の引き落としができなかったお客様のお問い合わせに対し、AIが回答するチャットボットをリリースしました。「AIが法令上で問題のあるような返答をしてしまわないよう、使い方を工夫することでガバナンスを保ったサービスを公開することができました」と、同社の丸山氏は話します。

人材育成、サポート、インフラ整備…

ロボット・AIどちらの活用促進にも共通する鍵

金融DX(デジタルトランスフォーメーション)のツールとして、ロボットは多くの成果を上げてきましたが、上記のような先進事例からは、ロボット活用のために取り組んできたさまざまな施策が、金融機関のAI活用の土台になっているという事実もうかがうことができます。

オリエントコーポレーションでは415体のロボットが稼働し、年間約24万時間を削減しています。その過程で、3年ほどかけてロボットを市民開発できるメンバーを250人以上育成してきました。同社の嶋本氏は、「彼らは通常業務を行いながら自ら業務の自動化を推進できる人材です。全社員の約12%に相当し、これからも現場業務の改革に貢献できる立場です」と、人材の重要性を語り、さらに「その育成には力を入れており、ロボット開発の内製化推進のためにトレーナー認定スキルを持った社員を5名育て上げています」と、明かします。

SBI新生銀行も、人材育成と統合管理体制構築の両面から、ロボットの活用を戦略的に推進しています。同社の小野里氏は「ロボット開発は市民開発を前提に進めてきましたが、品質や安定運用を実現するために専門部署による支援体制を強化しました。さらに、クラウド上で開発・実行・管理を一元化できる『UiPath Automation Cloud』と、実行状況の可視化やスケジューリングを可能にする『UiPath Orchestrator』を導入し、運用効率と保守性を高める基盤整備が着実に進んでいます。」と話し、こうした支援体制と技術基盤の整備が、AIをはじめとする先端技術の活用を加速させる重要な鍵になると強調します。

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株式会社SBI新生銀行

グループデジタル戦略部 統轄次長 小野里 啓志氏

JPX総研/日本取引所グループでは、市民開発のロボットが76体に対して、プロ開発のロボットが119体稼働しており、比較的バランスが取れた形でロボット活用を推進していると言えます。こうした現状を生かしながら、太子氏は「これまでロボットは定型的な業務に適用していましたが、今後は多様なインプットに柔軟に対応できる生成AIを使うことで、より複雑な業務プロセスにも活用していきます」と語ります。

これらの事例から、業務に応じてロボットに代えてAIを取り入れたり、ロボットとAIを連係させたりしていく中で、ロボットとAIの活用促進には共通の点が多く見られることが分かります。

UiPathではお客さまの業務改善に最適なソリューションを提案するため、ロボットだけではなくAIエージェントを統合した「エージェンティックオートメーション」の展開に力を注いでいます。金融業界においても、ロボットによって業務を自動化・効率化すると同時に、AIによる生産性の向上なども求められていることから、「ロボット×AI」のニーズはますます高まっていくと見ています。

自動化はゴールではない

エージェンティックオートメーションで、誰もが恩恵を受けられる時代へ

最後に、AIのような新しい技術を取り入れるにあたり、どのような考え方を持って臨むべきか、これまで登場した4人の方に意見をうかがいました。

オリエントコーポレーションの嶋本氏は、「生成AIやロボットを組み合わせて、消費者の満足度を向上させたり、社員の働きやすい環境を作ったりすることを考えるのが最優先事項」としながら、「AIエージェントと言っても各社各様のものが同じ名称で呼ばれています。私たち自身が、AIエージェントとは何かという定義をしていく必要があると思います」と、AIの未来はユーザー企業が自ら開くものであると訴えます。

SBI新生銀行の小野里氏は、「金融機関は、安心感や信頼感を重視するあまり、慎重な姿勢になりやすい傾向があります。しかし、現在の市場環境では、変化に対応しないこと自体がリスクとなりつつあります。安全性や品質を維持しながら、競争力をさらに強化するためには、UiPathのようなグローバルSaaS(Software as a Service)基盤を迅速に取り入れ、変化のスピードに柔軟に対応する姿勢が重要です。」と指摘しました。慎重さよりも変化のスピードに対応していく前向きな姿勢が求められ、さもなければ競争力を失いかねないとの発言です。

JPX総研/日本取引所グループの太子氏は、「AI活用において、標準化と暗黙知の可視化は避けて通れません。AIは暗黙知を自動的に拾ってくれないので、暗黙知の可視化を自動化の工程に入れておくことが今の段階では重要だと思います」と、自社のAI導入経験を元に話します。

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PayPayカード株式会社

DX推進本部 DX開発部部長 丸山 秀樹氏

PayPayカードの丸山氏は、AIを活用するほどシステムが増えていくことによる、運用工数の増大を懸念しています。「どのようなシステムでも定期的なバージョンアップの後では多くのソーステストが必要になります。こうしたテストもAIで自動化して、運用工数を減らせるようになるといいと思います」と、今後の展開に期待を込めました。

ロボットによる自動化、そこにAIを融合させ業務レベルを向上していく「ロボット×AI」は、企業にも現場で働く人々にも目覚ましい効果をもたらすものとUiPathは確信しています。SBI新生銀行のビジネス現場ではロボットだけでなく生成AIを使うことで、単純作業から解放されてうれしいと、感謝の声が上がっているそうです。「ビジネスの現場とIT部門が一体になってDXを実践できる環境になってきたことを実感します」(小野里氏)。

ロボットが登場してからしばらくの間は、時間削減や業務効率化がその価値として高く掲げられていました。ただこうして金融業界の新しい声を集めてみると、明らかに変化が始まっていることは間違いありません。ロボットとAIが融合したエージェンティックオートメーションを進めることで、業務を刷新し、新しい価値を生み出す方向へと企業が動き出していることを感じていただけるでしょう。

Digital Marketing Japan Team
Japan PR Team

Japan, UiPath

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