企業におけるDX推進に伴い、RPAの導入は年々加速しています。当初は経理部門などExcelを多く使う部署で導入される傾向にありましたが、昨今は適用領域が拡がり、営業部門や購買部門など幅広い業種でRPAが採用されるようになりました。一方、他の分野に比べてRPA化の波がまだ来ていないのが、法務の世界です。高度な人の判断を要する業務が多いため、自動化するのが難しい分野でもあります。
このような法務分野のRPAによる自動化に積極的に取り組んでいるのが、UiPathの法務部門です。2020年にはトムソン・ロイター社が主催する「ALB(Asian Legal Business)Japan Law Awards2020」にノミネートもされました。
今回は、法務・コンプライアンス本部 法務部長の吉田瑞穂が、現在進行形の法務の本格RPA化に向けた活動や、これまでの企業法務とは異なるRPA業界独自の法務の仕事について紹介します。
「ALB Japan Law Awards 2020」のノミネートについて、吉田は「UiPathは、“A Robot for Every Person(すべての人にロボットを)”という考えのもと、多くの企業様のRPAによる業務自動化を支援させていただいてきました。また、UiPathは一貫して社会貢献活動にも力を入れており、2020年には雇用調整助成金等の新型コロナウイルス感染症に伴う助成金の申請サポートのためのロボットの無償提供なども行っています。今回のノミネートでは、こうしたRPAを活用したイノベーティブな活動を、法務部がコーポレート部門の立場からビジネスを円滑に進められるよう支えてきたことが認められたのではないか」ととらえています。
「もともとアワードへの応募を目指して活動していたのではなく、応募が決定したのも締め切り直前だったんです。応募フォームには過去1年間の活動をまとめたのですが、必要だと思ってやってきた日々の取り組みが認められたのは、やはり嬉しかったですね」
UiPathの法務部門は、企業との契約に関する業務を担当する“法務部”と、社内ルールや規定の運用、そして社員トレーニングなどを行う“コンプライアンス部”の2つにわかれています。
吉田は大手法律事務所でさまざまな業界の企業法務に携わったあと、UiPathの法務部門に転職しました。UiPathでの法務の仕事について「IT業界ということもあって、他業界より変化のスピードがかなり速い」と日々実感しています。
「特にRPAは新しいビジネスなので先例がないことが多く、自分たちで考え、創り出していく業務が大半です。そのうえUiPathは他の大手企業とも違って、仕事の進め方も速いです。なにしろ決断が速いんですね。既存の事例がないことは難しいけれど、そのぶんクリエイティブさに富んでいるし、仕事の面白さもあります」
法務の世界を長く歩んできた吉田は肌感覚として「法務部門の業務はRPAによる自動化とは無縁だと思っている人が多い」と感じています。専門的知識を必要とする“人間の判断”が業務のメインにあるため、そもそも自動化するのは難しいという先入観があるからです。
UiPathの法務部門ではそのような先入観を一切取り払い、「人の判断は不要だが時間がかかるものや、個人向けにカスタマイズする必要がない業務」はないか、アイデアを出し合ってきました。そうしてRPAで自動化したもののなかで、最も大きな効果をあげているのが「Export Control Check」です。
欧米各国や日本では、マネーロンダリングなどに関与していると疑われる企業等のリストが政府から公表されています。こうした企業との契約を避けるため、日々更新される各国のリストと自社の顧客リストを照合し、問題がないことを確認する必要があります。
UiPathではこのチェック作業をRPAにより自動化。ロボットが1日2回、リストを照合し該当企業がないかを調べます。「重要な業務ですが非常に時間もかかるし、毎日の作業なので、RPAで自動化したことにより、かなりの時間短縮ができています。おかげでメインである契約関連の業務に集中できます」と吉田はいいます。
他にもRPAのおかげで、知識のアップデートがスムーズにできるようになりました。これまでは自ら様々な情報にアクセスして最新の法知識をチェックする必要がありましたが、今ではロボットが新しい法律情報をピックアップして、自動的にお知らせしてくれます。「自分で調べる時間が短縮されますし、確実に新しい情報を入手できるので、非常に効率がよくなりました」。
さらにコンプライアンス部門では、社内トレーニングの未受講者に対するリマインドメールの送信や社内承認の共有フォルダへの格納などの事務作業の自動化も行っています。質疑応答のできるチャットボット機能も活用するなど、法務業界では無縁だと思われがちなRPAによる自動化がUiPathの法務部門では着々と進んでいます。
今、吉田がRPAによる自動化対象の業務として新たに検討しているのは、法務の重要な業務のひとつであるドキュメント管理です。
「法務部は日々発生する多くの企業様との契約プロセスにおいて主要な役割を担っており、それは膨大な数に上ります。それらを適切かつ効率的に把握、管理していくために欠かせないのがドキュメント管理です。例えば、1件ずつお客様アカウントごとにフォルダを作成し、契約や必要書類のバージョン管理を行うなどの方法が典型的です。大手法律事務所に在籍していた頃も、ドキュメント管理にかかる業務のボリュームは小さくなく、単純な仕事のわりに時間がかかっていました。ここを自動化できないかと検討しています」
また、企業法務に限らず、法曹界では契約交渉において、前回の契約書と新しい契約書の変更箇所を比較する作業も必須。契約書が更新されるたびに必要な作業が自動化できれば、大幅な工数の削減が実現できるなど、法務分野でもRPAの活用の余地は大きいと吉田は考えています。
「契約書などではWordファイルを使うことが多いですが、Excelを使用する業務と比べると、Wordの業務は自動化ワークフローを作るノウハウがまだまだ積みあがっていないのが現状です。現在も社内の技術者と相談を重ねながら、どのような方法で自動化できるかを試行錯誤しています。でも、ここが自動化できれば、企業法務という狭い範囲だけでなく、法律業界全体の仕事を変えられるのではないかと思います」
UiPathの法務部門が目指す姿は、一般的な企業法務とは大きく異なると吉田はいいます。
「社内の法務部門というと、ルールに厳しくビジネスにブレーキをかけるイメージがあるかもしれませんが、私たちUiPathの法務はむしろ、社員の方が安心して仕事を進められるようチームとしてサポートし、“ビジネスを加速させる”ことを目指しています」
法務の世界で革新的とも言えるような取り組みを続けている吉田。仕事でもっとも嬉しいのは「ベタかもしれないけれど、プロジェクトを一緒に担当した社員から“ありがとう”という言葉をかけてもらう瞬間。なによりその一言が、すべての原動力になっています」
UiPathの法務部門では、現在も積極的なRPA活用によって仕事の効率化を図っています。そして先例のないRPA業界における“法務”という分野で、クリエイティブな仕事に日々取り組んでいるのです。
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法務Japan, UiPath
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