経理財務業務は、主要な経営資源の一つとされる<カネ>を司る経営の中枢機能です。マクロ経済成長の鈍化により、日本企業の経理財務部門に期待される役割は、高度成長期のスコア・キーパー(取引を正しく処理し、記録する)から、経営者の戦略的なアドバイザーへと変化しているとも言われています。とはいえ、当然ながら「取引を正しく処理・記録する」という使命を放棄できるわけではなく、効率化と高度化を同時に進めることが求められています。
2019年12月9日(月)、「第2回 UiPath ユーザー会 経理財務分科会」が東京・大手町のUiPathセミナールームにて開催されました。経理財務業務にUiPathを活用中の約20の企業・団体の皆様にお集まりいただき、ユーザー登壇としてコーポレート・デザイン・パートナーズ、野村ホールディングスの導入事例をご紹介いただいたほか、UiPath社内の経理財務業務自動化事例のご紹介、自社の「経理財務ロボット」を紹介しあっていただくトークセッションなどを実施しました。
株式会社コーポレート・デザイン・パートナーズ
まずは、株式会社コーポレート・デザイン・パートナーズ クライアント・ソリューション部の平野氏に、野村グループの経理機能集約プロジェクトと同プロジェクトにおけるUiPath活用について発表いただきました。コーポレート・デザイン・パートナーズは、2019年8月に設立された野村ホールディングスの100%子会社であり、野村ホールディングス本社が従前担っていたグループ会社への経理サービス提供、および業務構築に関するコンサルティングを行なっています。
「野村グループには、国内だけでもおよそ30のグループ企業があります。グループ企業の業種は、コアビジネスである金融関連から農業関連まで多種多様で、企業規模もまちまちです。」
「小規模なグループ企業では、バックオフィス全般を1人でこなしているケースもあって、概して経理の専門人材が社内にいません。このような小規模グループ企業では、タイムリーな情報収集や大規模なシステム導入などへの対応に課題がありました。これらの課題の解決策として、グループ経理業務の集約を進めました。グループ企業は、経理に関する業務の全てをコーポレート・デザイン・パートナーズに委託します。コーポレート・デザイン・パートナーズでは、委託された業務を単に集約するのではなく、集約した業務を標準化し、クラウド会計システムや各種テクノロジーを利用して、極力人を介さない業務モデルを構築しています。」
「UiPathを主に活用しているのは、小規模グループ企業23社(ファンド含む)に導入しているクラウド会計システム「freee」とその上流にあるネットバンキングや購買発注システムとのシステム間連携です。システムも標準化の対象としていますが、中~大規模のグループ企業に適合するERPは、小規模グループ企業には機能が過剰で、コストも割高になります。以前であれば、ERPならばインターフェースの開発が不要になるため、これらの点を許容していたかもしれません。しかし、現在は大規模なインターフェース開発をしなくても、各種SaaSをRPAやAPIでつなぐことで低コストで同様のことが実現可能なのです。」
「ネットバンキングや立替経費システム等と会計システムをUiPathで連携させることで、既に年間2,000時間分(※)の効果を生んでいます。業務が標準化されておりイレギュラー対応もほとんどないため、UiPathの開発は3か月で完了しました。さらに、標準化がされていれば、今後受託する会社が増えても追加的な開発が不要、つまり、スケールが可能ということです。グループ経理業務の集約とRPA活用の両面で、標準化は非常に重要です。」
(※)2020年3月現在では3600時間
野村ホールディングス株式会社
続いて、野村ホールディングス株式会社ファイナンス業務部でデジタル イノベーションの推進を担っている小野田氏に、同社ファイナンス部門におけるRPAプロジェクトについて発表いただきました。
「CFOの方針として、RPA導入をファイナンス部門の競争力強化のための投資と位置付け、自部門主導で開発を含めたRPAを推進しました。製品選定の期間を経て、UiPathを選定してから初めの1年で50体、次の1年でさらに100体、2年で合計150体を開発しました。」
「開発については外部リソースを活用しましたが、品質にバラつきが生じてしまいました。そこで、開発品質の担保についても取り組みを進め、開発規約を定めるなどの対応を行ないました。しかし、単にルールを整備するだけでは、ルールからの逸脱を把握できず品質の担保としては弱いです。そこで、チェックツールを作成・利用したり、Orchestratorを活用したりすることで品質担保を強化しました(会場では品質管理ツールのスクリーンショットが投影され、会場から熱い視線が注がれていました)。」
「150体の開発を通してノウハウが蓄積され、現在、プロジェクトはROI極大化を追求するフェーズに入っています。比較的小さな案件を150件積み重ねてノウハウの蓄積とユーザーリテラシーの向上が図れたので、今後は大きな案件でROIを極大化していきます。コーポレート・デザイン・パートナーズにおけるグループ経理業務集約に関してのUiPath活用もROI極大化のための取り組みの一つです。」
UiPathからは自社における経費精算の自動化、および経理財務業務の中でもRPAの適用度が高い領域についてご紹介しました。
UiPath日本法人では、2019年10月より、AI-OCRを活用した経費精算システムへの入力自動化ロボットを全社員が利用できるようになっています。今回のユーザー会では、同ロボットのデモを行なったほか、 UiPath × AI-OCR の主な活用シーンやAI-OCR選定のポイントをご紹介しました。
さらに、UiPath担当者独自の分析による、「経理・財務業務のRPA適用ヒートマップ 」をご紹介しました。これは経理財務業務の各領域のうち、RPA化がしやすいタスクがどれだけ含まれているかを洗い出して、各領域のRPA適用度合いを3段階で表したものです。経理財務業務を俯瞰的に見て、RPA化の余地を検討するなどの用途を想定しています。
プログラムの最後に、テーブルトークセッション「わが社の経理財務ロボット紹介します」を実施しました。少人数グループに分かれて、自社の経理財務業務自動化事例を紹介しあってもらい、グループ代表を選んで事例を全体に発表していただきました。多くの方々が多少なりとも気になってしまう「他社事例」を直に収集できる絶好の
機会にもなり、トークセッションは大いに盛り上がり、プログラム終了後の懇親会でも活発な意見・情報交換が行なわれました。
UiPath ユーザー会 経理財務分科会は、ユーザー同士の交流に重きをおき、経理財務業務にUiPathを活用しているユーザー様が有益な会話が楽しめるサロンとなることを目指しています。
UiPathユーザー会では、今後も企業の壁を超えて情報共有や意見交換を行なえる場づくりを強化していきます。自社のデジタルトランスフォーメーションや働き方改革のヒントを見つけていただけるUiPathユーザー会に、ぜひご参加ください。
トピック:
経理・財務Japan, UiPath
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